脂肪酸伸長酵素Elovl6の機能解析 (脂質の質に視点をおいた病態研究)

脂肪酸の質の違いによる代謝制御および疾患発症の分子メカニズムの解明

近年の肥満ならびに生活習慣病患者の増加により、これら疾患の治療および予防に対しての有効な方法が早急に求められています。我々は、脂質合成転写因子SREBP の新規標的遺伝子の探索過程において、炭素数12-16の飽和・一価不飽和脂肪酸を基質とする脂肪酸伸長酵素Elovl6のクローニングに成功しました(J Lipid Res. 43:911, 2002)。さらに、Elovl6欠損マウスの作製、解析を行い、このマウスでは脂肪酸組成が鎖長や不飽和度に応じて著しく変化するとともに、食餌性および遺伝性肥満によるインスリン抵抗性が、肥満が持続した状態においても改善されることを明らかにしました(Nat. Med. 13:1193, 2007)。すなわち、組織や細胞に蓄積する脂質の「量」のみならず、脂肪酸の鎖長、不飽和度やそのバランスといった脂質の「質」もエネルギー代謝および生活習慣病発症の重要な決定因子であり、Elovl6の阻害は肥満が持続した状態においてもインスリン抵抗性、糖尿病、心血管リスクを改善する新たな治療法となる可能性があります。

そこで、本研究では、「脂肪酸の質の違い」という新しい視点から、生活習慣病の新しい予防法・治療法の開発を試みます。Elovl6遺伝子改変マウスの表現型解析、脂質メタボローム解析、トランスクリプトーム解析、臨床サンプルでの検証を統合的に行い、脂肪酸伸長酵素Elovl6を通じて脂肪酸の質の違い(脂肪酸多様性)の生理的意義とその分子メカニズムを理解した上で、疾患に対する根本的な予防法・治療法の開発を目指します。