PATIENT CARE

診療について

診療について

筑波大学内分泌代謝・糖尿病内科では、近年患者数が増加し続けている「糖尿病」、脂質異常症や高尿酸血症をはじめとする「代謝疾患」、ホルモンを分泌する臓器である甲状腺・副甲状腺・副腎・下垂体の異常に起因する「内分泌疾患」を対象とし、茨城県唯一の大学病院として、県内全域、そして県外からも数多くの症例を受け入れています。

診療実績

2020年度 内分泌代謝・糖尿病内科 診療実績

外来実患者数

3206

※うち糖尿病1843人

外来延べ患者数

15255

入院実患者数

436

※うち糖尿病331人

入院延べ患者数

5386

診療内容

内分泌代謝・糖尿病内科は、近年患者数が増加し続けている「糖尿病」、脂質異常症や高尿酸血症をはじめとする「代謝疾患」、ホルモンを分泌する臓器である甲状腺・副甲状腺・副腎・下垂体の異常に起因する「内分泌疾患」を対象とする診療科です。

糖尿病

厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、「糖尿病が強く疑われる」成人は、2016年時点で推計1000万人を超えたとされ、令和元年の報告では、60歳以上のおよそ5人に1人が「糖尿病が強く疑われる」とされています。その原因には、糖尿病を発症する確率が高い高齢者の割合が増加していることや、食の欧米化や活動量の低下によって肥満が増えていることがあげられます。さらに今後も増加し続けると言われている糖尿病は、いまや国民病であると言えます。

糖尿病の病態は人それぞれですが、自覚症状が無いままに発症し、進行してしまうことが少なくありません。慢性的に高血糖の状態が持続すると、眼や腎臓の合併症によってその機能が低下し、また動脈硬化の進行によって脳梗塞や心筋梗塞を発症してしまうこともあります。最近では、癌との関連も明らかとなってきています。このような合併症の出現は、生活の質の低下や寿命の短縮をもたらすため、糖尿病の治療の目標は、合併症を起こさずに健康に寿命を全うすることにあります。

糖尿病は、その他多くの治癒を目指す疾患とは異なり、上手に付き合って行くことが重要な疾患です。そのため、たとえ自覚症状が無くても定期的な通院が必要です。当科では、そのような疾患の特性上、一人一人の患者様の病態・合併症の状況や社会的環境に応じてその人にあった治療を行うことを心がけています。

糖尿病の薬物治療は、内服治療とインスリン治療に大別されますが、一般的に使用されるペン型のインスリン製剤による注射治療の他に、当科では最新のインスリンポンプ療法の導入・管理についても積極的に行っています。

また医師だけでなく、看護師や管理栄養師などとともにチームを組んで診療にあたり、特に食事・運動療法などの生活習慣の改善に力を入れています。糖尿病の合併症である糖尿病足病変に対しては、専門看護師によるフットケア外来を開設し、また外来での個人栄養指導・患者様向けの糖尿病教室なども積極的に行っています。

さらに当科は総合病院としての特徴を生かし、他診療科との迅速かつ密な連携を保ちながら診療を行っています。合併症について言えば、糖尿病網膜症については眼科と連携し、また糖尿病腎症については腎臓内科と連携することで、「血糖値」をよくするだけではなく、それぞれの専門性を活かしながら「全身を診る」ことを心がけています。また、比較的頻度の多い妊娠中の糖代謝異常(妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠)についても、当院の産婦人科や他医療機関と連携しながら多くの患者様の診療にあたっています。外科手術の際に糖尿病の管理が必要となることも多く、そのような場合は外科と連携しながら手術前後の糖尿病の管理を行っています。

代謝疾患・内分泌疾患

「代謝疾患」としては、血液中のコレステロールや中性脂肪などが上昇する脂質異常症を始め、痛風の原因となる高尿酸血症や、電解質・ミネラル代謝異常を対象に診療しています。「内分泌疾患」としては、ホルモンを分泌する臓器である甲状腺・副甲状腺・副腎・下垂体の異常に起因する疾患群の診療にあたっています。

我々の体内では、種々の作用を持つホルモンがバランスをとりながら体内の恒常性を維持していますが、内分泌疾患とはこれらのホルモンの作用に異常をきたし、恒常性を維持できなくなった状態のことを言います。原因となりうるホルモン産生臓器は多岐に渡りますが、特に重要な臓器として、間脳・下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎に起因する疾患を数多く診療しています。

その中でも比較的頻度の多い疾患としては、バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患や、高血圧の原因として知られる原発性アルドステロン症などです。橋本病やバセドウ病はいずれも男性に比べて女性に多い疾患で、比較的若年の方に多く発症するため、妊娠・出産への影響も考えて患者様にとって最良の医療を提供できるように努めており、当科では専門医によるバセドウ病外来を開設しています。原発性アルドステロン症は、難治性の高血圧の原因となり、副腎の腫瘍が原因で発症することが多いですが、これらの診断・治療のためには副腎静脈サンプリングとよばれるカテーテルを用いた特殊な検査が必要となることがありますが、当院では放射線科の協力のもとに施行することが可能です。

また、下垂体疾患や甲状腺疾患、副腎疾患などに対し手術が必要となった場合には迅速に外科に治療を依頼することで、単一医療施設で診断から治療までをスムーズに行うことができるよう他診療科と連携しています。

内分泌疾患の多くは緩徐に進行するため、本人も周囲も症状に気づかずに見逃されていることが少なくありません。また、稀な疾患も多く、中には遺伝性の疾患も含まれますが、実際は専門医療機関が限られています。当科は、診断に必要なほとんどの検査を院内で施行することができますので、疑わしい症例について周辺の医療機関から数多くの紹介をいただき、県内の中核病院として内分泌疾患の診療にあたっています。

当科におけるチーム医療

内分泌代謝・糖尿病内科では、外来診療・入院診療ともに、糖尿病療養指導士(CDE)、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、検査技師、医療ソーシャルワーカーなどの多職種と緊密に連携しつつ、患者様それぞれの個別の病態・社会環境にあった福祉サポートや医学的治療のご提案、患者様ご家族へのサポートを行い、患者様ご自身の治療への意欲を引き出せるようにつとめております。

具体的な取り組み

  • 個々の症例に対する多職種による糖尿病カンファレンス
  • フットケア外来
  • 外来・入院における糖尿病看護認定看護師、糖尿病療養指導士による糖尿病の療養指導
  • 管理栄養士による個別栄養指導やカーボカウントの取得指導
  • 理学療法士による糖尿病患者に対応したリハビリ・運動療法
  • 多職種による糖尿病教室の実施
  • 世界糖尿病デーへの参加による啓蒙

など多岐にわたります。