
関谷 元博Motohiro Sekiya
略歴
| 1999年 | 東京大学医学部医学科 卒 |
|---|---|
| 2001年-2005年 | 東京大学大学院医学系研究科(医学博士) |
| 2005年-2006年 | 東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 医員 |
| 2006年-2007年 | ヒューマンサイエンス財団リサーチレジデント |
| 2007年-2009年 | 日本学術振興会特別研究員(PD) |
| 2009年11月まで | 東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科助教 |
| 2009年12月-2015年12月 | ハーバード公衆衛生大学院, 博士研究員 |
| 2016年1月-2018年11月 | 筑波大学 医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科 講師 |
| 2018年12月-2026年1月 | 筑波大学 医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科 准教授 |
| 2026年2月- | 筑波大学 医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科 教授 |
所属学会
日本内科学会、日本糖尿病学会(関東甲信越支部専門医委員)、日本糖尿病合併症学会、日本動脈硬化学会(評議員)、日本内分泌学会、日本臨床分子医学会(理事、評議員)、日本肥満学会(評議員)
診療について
2026年2月より伝統ある筑波大学 内分泌代謝・糖尿病内科の教授を拝命しました関谷元博と申します。
我々が診療する内分泌・代謝疾患は糖尿病をはじめとしたメタボリックシンドロームや下垂体、甲状腺、副腎などの内分泌臓器の機能調節異常などが中心となります。
メタボリックシンドロームは過食などの生活習慣に原因が求められ、生活習慣の欧米化が問題視されることが多いですが、実は過食によってメタボリックシンドロームとなりやすい体質・遺伝背景が強く影響しており、患者さんが「過食を慎むような自己管理能力を欠いている」がゆえに疾病に罹患しているという短絡的な考えには慎重でいる必要があります。また糖尿病をはじめとしたメタボリックシンドロームの病態の多くは加齢性疾患の側面を持っていて、加齢とともに生体機能が低下することも大きく影響し、実際に糖尿病で受診される患者さんは年齢とともに増加します。
このように「食べ過ぎ」や「運動不足」など患者さんの責任と片付けられがちなこれらの疾患は、患者さんからすると修正しようのない体質や加齢による影響などが大きな原因となっていることも多く、そうした正しい理解に基づく診療を行っていくことが重要です。
また糖尿病診療の大きな柱は合併症の予防になりますが、糖尿病の科学が未熟であった頃は血糖を正常に保つことが何より重要と考えられていましたが、大規模臨床試験や基礎医学の発展から、単に血糖を正常化すればよいのではなく、どのように血糖を管理するかも重要で、かつ、大きな個人差もあり、従来の単純化された考えから脱却して様々な先進的知見を考慮しながら個々の患者さんの診療に当たる必要があることがわかってきました。こうした歴史的変遷は10年後、50年後、100年後の糖尿病の診療はまた違った考え方になっている可能性を示唆しており、常に先進的な理解を得ながら、目の前の患者さんに元気で楽しく長生きしてもらえるように診療を行っていく必要があります。
内分泌臓器の疾患もバセドウ病、橋本病、先端巨大症、クッシング症候群のような古くから変わらず存在し、治療を必要とする疾患群があり、一部は希少疾患で専門的な知識が診療に不可欠です。古くからある疾患群もあれば、昨今問題になってきた疾患群もあります。多くの悪性腫瘍の患者さんの命を救ってきている免疫チェックポイント阻害剤ですが、その想定外の作用で内分泌疾患を発症する患者さんも増えており、こうした患者さんの多くは急に生命の維持が危険にさらされるため、我々診療科の遅滞なき介入が必要です。また内分泌疾患はホルモンによる臓器間の連携、恒常性維持機構の破綻から発症しますが、昨今の科学の発展によって新しいホルモンが次々と同定されており内分泌学という学問の進歩も日進月歩です。常に我々の頭の中の教科書を最新の科学で更新された状態にしておく必要があります。
そしてこれら疾患の診療に共通しているのは、長期にわたって患者さんと手を取り合って歩んでいく診療スタイルです。我々の診療科は糖尿病も血糖を良い状態に保ちつつ、全身に合併症のような健康障害がないか確認していく。内分泌疾患もホルモンのバランスを最適に保ち、全身に関連する健康異常が起きていないか確認していく。患者さんの人生に寄り添いながら、患者さんの状態を最適なものに調整して、患者さんの人生を伴走させていただく、そんな診療です。その中に患者さんの悲喜交々の様々なライフイベントも共有させていただき、一緒に笑ったり、一緒に涙したり、そんな貴重な体験をさせていただく度に医者冥利に尽きると感じます。

研究・教育について
最新の科学に基づく診療の重要性について記載しましたが、そうした診療を行うには医学研究が重要です。平時から患者さんがどんな問題に悩んでいるかを目の当たりにしていれば、おのずと自ら研究して少しでも問題を解決したい、という気持ちになります。我々の診療科は医学研究にも力を入れており、基礎研究、基礎と臨床をつなぐ研究(トランスレーショナルリサーチ)、臨床研究と多彩な研究を、世界に発信できる高いレベルで行っています。日々、患者さんの言葉に耳を傾ける中に革新的な研究のヒントが潜在していることが多く、我々の強みはそうした患者さんの診療から研究の入り口を見つけ、完全な基礎研究に還元し、新しい基礎研究の領域を創出したりもしながら、最後には患者さんに利するような応用研究にも発展させられる、そんな力があることです。
生命が1つの細胞として地球上に誕生したその瞬間から代謝は存在しており、進化の過程で複雑性を獲得するために、生命は代謝を大いに利用してきました。よって代謝はいわゆる「代謝疾患」を超えてほぼ全ての生命現象に関与しており、がん、免疫、精神心理などありとあらゆるものに関わっており、我々の研究対象も対象にならないものはないくらい領域横断的です。研究室の歴史的に醸成された土壌も全てのアイディアを拒まない寛大さ、広大な好奇心にあふれています。数学から医学の理解に踏み込むようなことも行っています。そして生命とは何かの問いの延長には、この世界とは何か、とさらに根源的な探求が待っています。
医学・生物学の発展のためには独自性の高い、革新的な研究が必要ですが、そうしたものほど先行研究がなく、道のりは苦難に満ちたものになります。一方で何かを知る、理解することは我々に内在する快反応を刺激します。Aha!体験などという言葉にも端的に表されたりします。苦労の末に得られた科学的な新しい理解というのは研究を一度したものであればよくわかりますが、望外の喜びとなるものです。我々は誰の足跡もない、新雪の上を歩いていくような研究を大事にしています。
新しい理解を得る楽しさ、自らの研究で患者さんに喜んでもらえる楽しさ、様々な楽しさが研究にはあります。そしてこうした研究の楽しさを体感できるのは、医学に精通した医師だけではなく、医学の勉強を始めた医学生や大学院生でも同じであることが素晴らしく、我々の教室では学部生から熟練した医師、医学研究者まで幅広く研究を楽しんでいます。大学院生としての研究への参加の形は医学学位プログラム、フロンティア医科学学位プログラム、ヒューマニクス学位プログラム、あるいはヒューマンバイオロジー学位プログラムと多彩に用意されていますし、学部生では研究室演習、新医学専攻などもあります。医学の学習はともすれば、これまでに確立された医学体系を深く考えずそのまま覚えこむという形になりがちですが、医学生には研究の過程も勉強してもらうことでより柔軟性のある医師に成長してくれるものと考えます。教育を研究と同じ項に記載したのは、旧来の型にはまった教育もありますが、自律的に、かつ柔軟に思考する、研究目線の教育が今後さらに重要になっていくと思われるからです。
「蟪蛄春秋を知らず伊虫あに朱陽の節を知らんや」(セミは夏しか生きることができないので、春や秋があることを知らない)。様々な解釈がありますが、セミが夏しか知らないように、我々も見えていないものがたくさんあります。医学の発展によってかなりの病期を制御することができるようになったと錯覚しがちですが、おそらく我々が理解したのはこの世界の本当に一部であろうと思っています。逆に言えば我々の理解の及んでいない広大な領域が残されており、10年後の医学、50年後の医学は全く違ったものになっていると思っています。そうしたところに挑戦を続けたいと思っています。
こうした我々の日々の取り組みに多くの方に共感していただいて、そうした方々と一緒にさらに歩んでいければと思っております。
